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概要:2022年度上半期の貿易赤字が11兆円台に乗せ、年間で20兆円台に膨らむ可能性が高まった。国際収支も今年7、8月に季節調整済みで2カ月連続の赤字に沈んでおり、国際収支の先行きにも「黄信号」が点灯し始めている。このまま貿易赤字の拡大を放置した場合、いずれかの時点で国際収支も赤字が継続する事態になる可能性も出てきた。
[東京 20日 ロイター] - 2022年度上半期の貿易赤字が11兆円台に乗せ、年間で20兆円台に膨らむ可能性が高まった。国際収支も今年7、8月に季節調整済みで2カ月連続の赤字に沈んでおり、国際収支の先行きにも「黄信号」が点灯し始めている。このまま貿易赤字の拡大を放置した場合、いずれかの時点で国際収支も赤字が継続する事態になる可能性も出てきた。
10月20日、2022年度上半期の貿易赤字が11兆円台に乗せ、年間で20兆円台に膨らむ可能性が高まった。
1980年代の米国のように財政赤字と経常赤字の「双子の赤字」状態に直面すれば、基軸通貨国でない日本の円が持続的に下落し、輸入物価の上昇を起点にしたインフレの進行に見舞われるという「未来図」も見えてくる。
この事態を回避するには、今から貿易赤字脱却のための方策を打つ必要がある。ところが、岸田文雄政権が検討中の総合経済対策には、目立った貿易赤字対策が見られない。電気料金への支援だけでなく、日本企業の国内還流策が不可欠の政策対応ではないか。
<上半期、過去最大の赤字>
財務省が20日発表した2022年4―9月の貿易収支は、累積赤字額が11兆0075億円となり、年度半期ベースで過去最大となった。下半期は貿易赤字が増えやすいという季節性があるほか、さらに円安が進む可能性などを見込むと、22年度全体で20兆円の貿易赤字になる可能性が高まっている。
最新のデータである9月単月をみると、日本の輸出産業の「4番打者」とも言える自動車は前年比122.2%増と大幅に伸びている。しかし、輸入の伸び(同45.9%増)が輸出の伸び(同28.9%増)を大幅に上回り、2兆0939億円の赤字を計上した。
原油をはじめとするエネルギー価格の上昇と円安の進展が二重に影響し、大幅な円安にもかかわらず、貿易赤字が増加するという現象を生み出している。円安なら価格効果によって輸出数量が急増するはずであるが、今年3月から8月まで前年比マイナスで推移し、9月に7カ月ぶりのプラスとなったものの、わずかに3.7%にとどまった。製造拠点の海外シフトの結果、輸出ドライブが効かない構造になってしまった可能性がある。
<経常収支、年間赤字へ転落の前兆>
したがって一部の識者が言うように「貿易赤字の増加は一時的」ではなく、構造的な問題が存在し、巨額の貿易赤字が生み出されやすくなっているとみた方がいいのではないか。
実際、今年7月と8月の国際収支では、季節調整済みで6290億円と5305億円と2カ月連続の赤字に転落した。第1次所得収支の黒字で貿易赤字を吸収できなくなってきたことの1つの証拠だ。
2021年度は第1次所得収支と第2次所得収支を合わせると、19兆0910億円の黒字だった。22年度も同水準だと仮定した場合、貿易収支が20兆円台の赤字になれば、経常収支は年間で赤字になることもありえる。「貿易赤字の大きさに一喜一憂するのは誤り」という見方は、日本経済を中長期的に展望した場合、楽観的に過ぎるという面がありそうだ。
<「双子の赤字」化、円下落と物価上昇の長期化へ>
日本の経常収支が、近い将来に黒字から赤字に転落し、その基調が継続するようになると何が起きるのか。2021年末に日本は411兆1841億円の対外純資産を保有しており、今の英国が直面している「ポンド危機」のようなことが直ちに起きることはない。
しかし、すでに日本の財政は1000兆円を超す債務を抱えており、経常収支の赤字が小幅ながらも継続し、その額も次第に増大する基調になれば、グローバルな市場では「日本版双子の赤字」が意識され出すリスクもある。
1980年代の米国は経常赤字と財政赤字の「双子の赤字」を抱えていたが、基軸通貨・ドルの強みを生かし、高金利を武器に米国内への資金流入を生み出していた。
だが、日本で双子の赤字の存在がクローズアップされるようになれば、基軸通貨でない円は下落を続け、今のような円安を生かせない経済構造が続いていると、貿易赤字増大と円安の連鎖を生んで、輸入物価の上昇が加速しているだろう。
その結果、低物価上昇率の日本は過去のものとなり、恒常的な物価上昇に直面するというシナリオの実現可能性が相応に高まっていることも予想される。
<製造業の国内回帰、政府の大胆な支援策必要>
足元で起きている少子化は、1990年代にしっかりとした対策を打っていれば、かなり緩和できたと一部の専門家は分析している。貿易赤字累増の構造を変える取り組みも、今から着手すれば対応可能だと筆者は考える。
最初に取り組むべき対策は、製造業の国内回帰を大幅に促進する対策である。国内に製造現場を移す企業には、思い切った減税対応を実施するべきだ。その財源には、積み上げたままになっている利益剰余金への課税や、国内回帰に消極的な企業への課税強化などで対応するべきだ。
「稼ぐ力」を強化する方向で、政府が「生きたカネ」を使う方向に注力してほしい。競争力を失った企業への期限のない支援は日本経済の活力復活に結びつかず、貿易収支の黒字化にも貢献しないだろう。
岸田首相は現在の貿易赤字膨張の現実を直視し、黒字転換を目指すことで「衰退への道」から離脱することを国民に訴えてほしい。最も恐ろしい展開は、ロンドンで起きている国際収支危機とも言える事態を「対岸の火事」と放置していることだ。
臨時国会の審議で、貿易赤字が20兆円になるのに「本当に大丈夫ですか」との質問さえ出ないのはなぜなのか。岸田首相のリーダーシップが発揮されれば、ほどなく世論調査の数字に反映されるだろう。
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